私は実家を出てから、もう何十年も経っていますが、何故か、夢では実家住まいなのです。
すでに、実家自体が無くなっているのですが、何故このような夢を見るのでしょうか?
あなたは今でも実家の夢を見ませんか?
私だけかなと気になって検索してみたところ、世の中には私のような方が多くいらっしゃいました。ちなみに「発言小町」では、次のような方々がいらっしゃいました。
・なぜか、夢の中ではいつも自分は「実家」に住んでいて、新居が出てきません。
・夢に出てくるのは10年前に住んでいた実家です。現在の家は出てきません。
・わたしの実家は建て替えているのですが、結婚前から夢に出てくる家は古い方の家。
・結婚5年目ですけど、未だに独身で実家住まいの夢を見ます。
・私なんて、実家を出て27年になりますが、未だに実家の夢を見ますよ。
・私も結婚してからそういう夢を見るようになりました。
・未だに夢の中では「実家住まい・独身」のまんまです。
・結婚してから住んでいる家は出てきたためしがないですね。
「ヤフー知恵袋」でも「実家の夢ばかり見るのは何故?」という種の質問は多いです。
ところが、実家の夢ばかり見るのは何故? という質問に対しての回答は夢占いがほとんどです。しかも、その大半は心身ともに疲れているからとか、誰かに優しくされたいからとか、今が上手くいってないからとか、過去に悔やんでいることがあり解決していないからなどというものです。
でも、別にそのようなこととは関係なしに夢を見ていますので、原因は別のところにありそうです。
そこで、色々と海馬や大脳皮質をはじめ記憶のメカニズムについて確認したところ、自伝的記憶とレミニセンス・バンプがその解答であることが分かりました。
そもそも夢とは何でしょう?
まず、夢とは何?という疑問です。
簡単に言いますと、夢はその人が今までの人生で体験した出来事の記憶の断片が集まり創られたもので、その人しか見ることのできないプライベート映画だと言えます。
体験といっても、実際に体験していないことも含まれます。例えばTVや映画などで観ていたり、小説やマンガを読んでいたり、色々と思考したり想像したことがあったりすると、それらの記憶は夢を創る材料になります。
夢は記憶の断片が集まり創られたものだと分かったところで、次はどのような記憶が夢を創り易いのかをみていきましょう。
夢を創るエピソード記憶と自伝的記憶
夢の材料である「個人が経験した出来事に関する記憶」は、認知心理学という学問で、エピソード記憶と呼ばれています。
これも簡単に言いますと、エピソード記憶は何を経験したかという出来事そのものだけではなく、その出来事を経験したときの時間や場所、そのときの感情が含まれるのが特徴である記憶です。特に感情は記憶の質に影響します。
そのエピソード記憶の中でも、その人にとって特に重要な意味を持ち、その人のアイデンティティを形作るような過去の記憶のことを自伝的記憶といいます。
アイデンティティってよく聞きますが、「自己同一性」とか「人が時や場面を越えて一個の人格として存在し、自己を自己として確信する自我の統一を持っていること」などと意味付けされていますが、ここでは簡単に「自分らしさ」としておいてください(笑
結論としては、この自伝的記憶が最も夢を創り易いといえます。
さて、いよいよ次は自伝的記憶について、何歳の時に経験した出来事が夢に反映されやすいのか?というこの記事の最大の疑問です。
「去る者は日々に疎し」ではありませんが、一般的に友人であった人もつきあいなくなれば忘れていくものです。無意識下に沈んだ過去の記憶よりも最近の記憶の方が鮮明です。
しかし、それでは、過去より現在の記憶が優先され、実家の夢ばかり見るのは何故?という答えは出ません。
実はほとんどの方が知らない現象があったのです!
自伝的記憶には、次のような3つの特徴があると言われています。
1/最近あったことをよく思い出す親近性効果。
2/10代から20代までの出来事がよく思い出されるレミニセンスバンプ。
3/3、4歳より前の記憶はない(思い出せない)という幼児期健忘。
そうなのです!実家の夢を見やすい理由の1つは、「レミニセンス・バンプ」だったのです。
レミニセンス・バンプという奇妙な現象
それでは、レミニセンス・バンプについて順番に説明します。
あなたは、「海」と聞いて何を思い出しますか?
最近の海釣り?昨年の海水浴?ぞれとも高校時代に友人と一緒に岬めぐりしたことですか?
このように、ある単語を見てもらい、生まれてから現在までの出来事で、思い出したことを教えてもらいます。そして、それが何歳頃の出来事であるのかもあわせて教えてもらいます。
これは「手がかり語法」と言って、過去のさまざまな出来事を思い出してもらい、その数とそれが何歳のときの出来事であるかという関係を明らかにするものです。
そして!
研究の結果、10代から20代までの出来事がよく思い出されることが分かりました!
この結果を図にあらわすと、下図のように思い出す量のピークとなる時期が10代から20代までで、これがコブ(=バンプ)のように見えるので、この現象をレミニセンス・バンプと呼びます。レミニセンスは回想という意味です。
実家の夢ばかり見るのは何故?
それは、実家がその人にとってアイデンティティを形作るような、特に重要な意味を持つ自伝的記憶であり、10代から20代までの出来事がよく思い出されるというレミニセンス・バンプ現象と一致するから!というのがこの記事の結論です。
実家に限らず、中学や高校、そして大学時代の夢、社会人になった20代や人によっては30代の頃の夢を多く見るのは特異ではなく、ごく自然なことだと言えますね。
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